読書について その13

今から55年ほど前の話ですが、私はかつて結婚する前の20代終わり頃に渡米に誘われたことがありました。

それは知り合いのお姉さんが進駐軍の精神科の軍医と結婚してその家族がアメリカに帰ることになり、日本人女性を雇いたいと探していたからです。男の子が2人いて就学前で手もかかったし、何より心細かったのだろうと思われました。

しかし、どうしてもアメリカ南部まで行く決心がつかず勿論断ってしまいました。自分はあの頃、アメリカにおける有色人の在り様も詳しくは想像できなかったのです。その後彼女がどうしておられるかは音信不通なってしまって分かりません。

最近歴史に興味が出て米国史の深層を知りたく今年3月出版された「場所からたどるアメリカの奴隷制の歴史」米国史の真実をめぐるダークツーリズム(クリント・スミス著 、風早さとみ訳)を読んでみました。

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なんと南北戦争の中身も深く知らなかったし、このような大規模な略奪と支配をあっさりとしか学んでいなかったのです。自分は世界をしっかり見ていなかったのだろう、人間の本質が見えていなかったのだろうと嘆かわしい思いになりました。

ことに黒人女性が弱い立場で何代にもわたり慰み者にされたりしていたこと、それをした一人が元大統領で何人もの子孫が残されていたりして、想像を超えたことでした。アメリカ原住民、ヨーロッパの国々、アフリカ大陸、メキシコ湾に面した国々、南アメリカ、これらの人々の歴史と深く結びついていたのです。

国史の深層からにじみ出てくる物事を思ってしまい心が沈んでしまいました。不条理に興奮したり涙したり、現在を考えたり、又地図で地名を探したりした読書でした。