読書について  その20

加藤周一を21世紀に引き継ぐために加藤周一生誕百年記念国際シンポジュウム講演録』(三浦信孝・鷲巣力編)を読んでみました。なぜ今かといいますのは2年前に出版されたのですが、図書館で長く借りることができないし高価で求めるのことができなかったからです。私にとってはこの時代の数少ない知の巨人であり、また近かづきがたい方でもあります。

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理解困難そうな460ページ余りのA5版の本です。自分にはいかにしてもこの膨大な知見を専門的に精密に深く知ることはできないので、軽くなぞるような読書となってしまいました。

医学を学び、英、仏、ドイツ語をきわめ、日本文学、漢文学、歴史、美学、政治哲学、それを内外で講義していらしたという、その知力を蓄えるための過程なども含めて呆然としてしまいました。科学を出発点としておられたからかしらと私は感じたのですが、文学史等の時間的区分の仕方がすっきりしていて入りやすいのです。細密な分類で、この感じは他の歴史書にはないものです。時間の経過と表出されている作品との関係の有様を見て取る事が容易です。

この本中でも多く話題になった『日本文学史序説』上・下は2000年頃から自分にとっても、何かを読むときの手引きになっております。「下」についている膨大な作家名の索引に助けられたことは度々です。読むべきものの発掘元にもなっております。

 

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残念ながら1980年度くらいまでの作品で終了されております。もう一つとし印象深いのは自叙伝として残っている「羊の歌」上下です。これはだいぶ前読書会で取り上げたことがありました。なつかしい作品です。

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晩年の活動、「九条の会」立ち上げへの熱意と 戦時下で経験された事柄、原爆投下後の広島での調査との繋がりを強く想像しました。

最終的にお母さまが信仰なさっておられた、カトリックに帰依なさったようです。