asd-granmaのブログ

86歳のおばあさんです

思い 113

自分は、時間と共に行動範囲が狭まっています。この暑さでは朝40分位歩くと、その後行動力が持たないのです。こうした変化をおだやかにやり過ごしたいのです。

そこで年行った方の内面を描いた著書に出会いたいと願っていました。そんな中丁度、ポール・オースターの遺作『バウム・ガートナー』(柴田元幸訳 新潮社)をリクエストしていて順番がやっと回ってきました。一気読みでした。著者は東ヨ-ロッパからアメリカに移民としてきたユダヤ系から生を受けた背景をもっていたようです。

www.shinchosha.co.jp

物語の優秀な主人公からアメリカ社会の中で個人を確立していく学びや過程を知ることが出来ました。日本人にはないバックグラウンドの広さと温かさを感じました。それと女性の意思を持つこと潔さが認められることが分かりました。

著者が肺がんに疾患した後書かれたこともあってか、老いていく主人公を愛おしんで表現しているように思いました。

老いを受け入れていく柔らかさ、ひろさ、いいですね。でも結末にちょっと驚き戸惑いました。

思い 112

暑い日が連続で元気が出ません。でも頑張って、子どもに手伝ってもらって部屋のカーテンを洗いました。部屋が明るくなり、冬布団の洗濯も頼めてほっとしました。

身の回りのことを進めながら、4,5日時間があったので『ふたりの読書会 無期受刑者との本をめぐる往復書簡』(向井和美著 岩波書店出版)を読破し、お二人の読書に対する熱意に圧倒されました。

www.iwanami.co.jp

book.asahi.com

この本は少し前同じ著者の『読書会という幸福』を読書会で取り上げていたで関連で求めたのでした。そして、向井和美さんは何年か前にカナダの『プリズン・ブック・クラブ』も翻訳されていました。これほどまでに本に入れ込んで熱意を持って生きておられることに驚くばかりです。

www.iwanami.co.jp

 

booksitoito.stores.jp

なにしろ『ふたりの読書会』は一年分の往復書簡なのですが、大よそ読むべき本が網羅されているのではと思われるような内容でした。感激して涙したり、怒ってみたり、取り上げられている著書に、「おお、これは読んでおきたい本だな」と感じたりしました。この著述の後もなお、お二人の往復書簡は続けられているとのことで、著者の行動力、継続力に驚くばかりです。 

自分は日頃感じているのですが、どうしても二者関係が感情を確認する基本のように思えるのです。もちろん孤独で居る時も露わになります。著書のなかの関係性に肉親によって培われた感性がありありと姿を現わされていました。それによって左右されてきた足跡が自分にも自分事のように提示されました。

そして自分と両親との関係系から育成された現実的な人間性を吟味する機会でもありました。ここに来てこれまで紆余曲折してきた自分の思いと、読書の在り方を顧みる鋭い本との出会いでした。

思い 111

読書会の課題本で久しぶりに村上春樹の短編集を読みました。2006年出版の『はじめての文学』(文芸春秋)という本です。

books.bunshun.jp

おお、文学とは随分幻想を描くものなんだ、そんな気持ちに引き込まれました。幻想の世界に快感を覚えられない自分がありありとみえてきました。始めにでてくる「シドニーのグリーン・ストリート」で主人公の恋人が言っているように、自分はフロイトやユングの理論を軽々と口にはできないのです。まともに直線的になりで逆に言いよどんでしまいます。           

いや、意外であったのは最後から2番目の作品「沈黙」が自分は好きですね。著者は解説で「正直言って、このようなストレートな話はあまりこのみではない」と書かれているのですが、多くの読者も切実に愛読しているようです。自分もなん回か読んで救われる思いがしました。そしてこの作品を記憶にとどめておきたいと思っています。

日頃読まない著書を読書会で読め興味深くなれたことは喜びです。

思い 110 

湿度が高く、空模様が安定しません。私はこんな時は散歩も気が進みません。白内障で読書もスピードが落ちてきているのですが、リクエストでやっと図書館から借りた『研修生』(多和田葉子著 中央公論社)を読みました。

www.chuko.co.jp

選んだ本はよく読んでおきたいです。自分が決めたのですから長い本でも読破できると自信が持てるようになってきました。時間がかかっても欲張りかもしれないけど、自分の中に残るものが必ずあります。

今回は多和田葉子さんが22歳からドイツに専門の書店経営者になる研修生として出かけられたとこから始まる話です。そこで仕事をし学ぶ中で物書きになる決心を固める物語です。単独ドイツで生活する実体験を基に書かれたものでした。

彼女が自律していく状況やドイツ人の仕事に対する考え方や労働者の暮らしが解かり興味深いものです。彼女の個人的な人間模様から彼女が確かなライターへの道を築いていった初期の様相を知ることができ親しみを感じました。

著書中に父親が描かれていたので多和田栄治氏についてちょっと調べてみました。彼自身著作もあるという只者ではない人物で、やはり彼女を育てた人だなと納得しました。 

思い 109

7月初めの水曜日アンドリュー・ワイエス展を観に行きました。いつもながら上野はにぎわっていました。

www.tobikan.jp

週半ばは混まないだろうと思い出かけたのですがどうして、午前の早い時間でも列ができていました。自分はワイエスについて、絵画が好きなのに知識がありませんでした。今回出会えて心底に残る絵画になりました。

油絵やアクリル画が多く描かれる中、水彩画とテンペラ画に適合しマッチし、自分の内的世界を深く緻密に表現していったことに心動かされました。

何気ない風景や古びた建築物や品々、そこに潜む歴史と空気感、暮らしていた佇まいがあらわれました。モデルなった人々との繋がりを解説書で読み、ワイエスの交流関係を知りました。アメリカの東海岸で生活していたワイエスの生涯を垣間見ることができました。心静まり、また一つわたしの推しが増えました。

      

思い 108

独り暮らししている自分は考えたり読んだりする時間が多いのです。書評で気になって、今風の一つの考え方として性的欲望の処理を買うことついて現状を知りたくなり、『人恋しくて女性用風俗に行ったあとで考えたお金とケアと欲望のこと』(藤谷千明著 中央公論新社)を読んでみました。

www.chuko.co.jp

以前から社会学の分野での論文とか小説で風俗は仕事としてあることは承知していました。人間も生き物ですから男女関係なく人恋しくて一線を超えて満足する行為に走るのですね。複雑な感情を伴う性行為を簡単にスマホで相手を選び、仕事として買える仕組みがあるようです。

こうした現状を作者自身が行為者として表現されたことを読んでみて、改めて私などは考え直す機会になります。一面の世相や、良し悪しを超えたこととか、お金がどう流れるのだろうかとか想像します。

作者の思い切った行為からそれにまつわる感情の変化も理解できました。一般的にも時代と共に性行為に関する考えも変化し昭和時代の自分は感受性がついていけないこともあります。若い世代にケアして貰ういま、若い世代の感性をいくらかでも知りたいと感じています。

思い 107

読書会の課題の本でもあり話題になっている『BUTTER』(柚木麻子著 河出書房新社)を読んでみました。

www.kawade.co.jp

ジャーナリストが主人公なのですが、実在の女性死刑確定囚をモデルにした物語でした。作者がモデルを実際にどのように周到に、取材したか考え込んでしまいました。そしていまこの小説がグローバルに話題になっている意味を考えています。

読みこむほどに思考すべきと思われる話題が盛りだくさんの物語でした。個人の歴史から発している心理的な問題、格差社会が生み出している現状が描かれ、登場する人物一人ひとりが抱えている心持ちに深い味わいがあります。

私としては小説はフィクションであることを心にして読むべきものだと思っています。それに作者の自由度をもって書かれているものとしてです。だから心の解放もされる。しかし今回自分は、読み進むに従いモデルとなった女性が繰り返した殺人に驚き、人間としての情愛とはなにか、家族とは何か、そこで考えが止まっています。そしてルッキズムや階級意識を自分のなかで確認し直しています。

今、どのような年代の人も孤立しやすく、適度な交流を持ちにくいです。それに多様性を保全しあって生活することの困難さを感じてます。顛末を読み終えて一層家族関係の維持の難しさを身をもって感じています。