読書について  その17

久しぶりで漱石の晩年の作品を読んでみました。『道草』『明暗』です。

はじめ「明暗」を読了したのですが、しっくりこないので、『道草』に戻ったのです。

www.shinchosha.co.jp

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それで、『道草』によって多くの心的謎が少しずつ私の考えの中に明かされました。想っていたより漱石が今風に言えば稀なアダルトチルドレンであったのではないかということです。私にしたら痛ましい感があります。

それにしてもお金に絡んだ事柄が明らかに書かれ他に見られないものがありました。あのような親族関係の締め付けのなかで消化器の異常をきたしながらの執筆、一方では才能あふれる人びととの交流があったことを思って改めて感じ入りました。ことに当時の若い才気ある人々に対する対応の仕方、育て方には驚きと敬意を持ってしまいます。

また、戦前の家族関係からはあのようなしがらみが生じていることが理解できました。少し時代は新しくもあり、市井の人であった私の父の立場にもまた夫にさえ、同類の事柄を感じることがありました。それに大いに影響を受けました。娘として、妻として、割り切れない親子の相互関係にです。

でも養育者としての考えが変化しつつありますね。それでもある少数の親に、どこかで戦前を引きずっている方もいます。私もふとそのような甘えがわいてくることがあります。おっとこれはいけないと思いを改めることがあります。若い世代に漱石が書いている『片付かなさ』に近づくのは難しい人も多いように思えます。核家族になってもせんじ詰めれば運命共同体的で何等か影響し合うしかないのですが。