読書について その5

5月の図書館での読書会の課題本は彩瀬まる著書『不在』(角川書店)でした。著者は今年36歳です。

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長い間自分としては小説が身近ではありませんでした。理由はドキュメントや症例に魅かれる感じが強かったからです。『不在』を読んでいくうちに他の著書も読もうと『桜の下で待っている』と『くちなし』を読んでみました。

 

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『桜の下で待っている』の方は自分も東北人なので懐かしく花巻の部分を読んでぜひ再び訪ねたい思いに駆られてしまいました。5組の家族の帰省物語でした。三冊とも家族関係の在り方、個人としての在り方に変化の流れを感じました。それは女性の変化でしょう。

 

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『くちなし』は読んでいくうちに自分の心が深い混濁に連れ込まれ、やがて明るみに連れ出されたような感じでした。宮沢賢治の動物が出てくる童話やカズオ・イシグロの現代を超えた感じがする物語を読んだときに似たものが私の胸の中に起こり漂い、作者の若い感性には驚きました。

こんな風に表現し自分を深く確かめる若い人がいる事が実感できました。しかも、そのうえ複雑な女性の感性に満ちていました。それが自分にも感じられ、喜びがこんな年寄りでもあるということです。

彩瀬まるさんの作品を選んでくださった会員の方にありがとうを送りたいです。