思い 46

医学書院のシリーズ、ケアをひらく 柴崎友香著『あらゆることは今起る』を読んでみました。このシリーズからは学びたいものが多く、この著作にもとても興味があったからです。自分はADHDASD半々の症状があって工夫して生きてきました。それを自覚したのは娘が診断されて育てていく過程での事でした。

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まず、読み進めて驚いたことは、我が家族の殆どの者が睡眠に関して多かれ少なかれ著者のような悩みを抱えていたことです。上の孫は過眠かと思われるような状態になっている時があります。脳の働きと眠りの関係、密に繋がってる、こんな当たり前で重要なこと、もっともっと意識すべきでした。意識がないと日常生活の決まり事を流れにそって日々継続していくのが困難になってしまいます。自分にも十代に似通った悩みの時があったのを思い出しました。ルーティンに従って日々継続すれば生活にまとまりがつきます。
睡眠が乱れると日常生活が難しいです。個々人によって眠りは現れ方に違いがあるようですが、本文はコンサータを上手に調節して使用しておられる具体的な例として読ませて頂きました。薬に対する意識、評価の一つのケースとして知っていると良いと感じました。下の孫は幼児期に診断されており、中学生になって課題ができず薬を考えたのです。でも年齢的に自ら使ってみようという自覚ができず、投薬されても薬を断念してしまい、残念に思っています。もっと慎重に試行錯誤すべきでした。
本人の自覚のありかたは非常に重要であり、使う時期も大事です。子どもにとっては親子関係のなかで築きあげるライフスタイルです。本文は成人の実例として繊細に薬を使いこなされている実感が伝わってきます。生活が困難になっている者には参考になります。しかし、薬にたどり着くまでの過程は、大変なものです。薬を使っての経過を観て調節するのが大切になります。
それで思い出したのが164回の芥川賞 宇佐美りん著『推し、燃ゆ』で、主人公は女子高生で診断を受け投薬されても無視して進んでいき、2年生で中退してしまうというストーリーです。医療に繋がり継続していくことの難しさを感じています。 著者の身をもっての合理的な考えに私のような者は脱帽です。

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あと気になったのは整理整頓と部屋の設えへの無関心さについてです。勿論それには個人差があるようなのですが感心がないと生活の質が落ちてしまう気がします。得てして生活者として大事な部分を占める家事がないがしろになる傾向が強いようです。家事が好きになれない理由も251ページの後半にあり、「おお言えてる」って感じがしました。自分の親族には家事や片付けが好きでない人が幾人もおりました。いまも身近な一人が私の悩みの種ですが、干渉介入は先方から避けられてます。

次に掲げられるのは小説の読み方や心の中へのおさめかたです。自分は50代ぐらいまであまり小説を読みませんでした。それは症例報告やドキュメンタリーを読むのに精いっぱいだったからです。でも知人と交流をするために小説を少しずつ読むようになり、この著者の読み方と似た経過を辿ってております。今は読書会で主に小説を読んで思考の引き出しの数を増やしております。 

次には著者の権威に関しての感性と考え方に頷いてしまいました。能力があり、その上で努力と苦心を重ねて今がある著者だからこのように表現ができたとも感じるのです。達成し得る限界は人それぞれで、飽くまでも成し遂げたくも、できないことはどうしても無理な人もいるのです。それに体感を吟味して言葉にして表現するのには能力とエネルギーが必要です。表現する事で助けがあるのですがそこまでの道のりを歩めない人が多くおります。
この本を読んで全く異なった生活者の私にも内容に似通っている多くの部分があり、著者のこの様な内面の大切な部分の表現によって想像逞しくできたことは貴重でした。勇気ある著者の自己開示に感謝します。