思い 32

最近のパレスチナ問題がこんな年寄りでも気になっています。ユダヤ人の文学は前から少しは読んでいたのですがパレスチナ系の人に関するものを全く読んでいないことに思い至り、エドワード・サイードの2009年に出た追悼集『エドワード・サイード 対話は続く』(みすず書房)の分かりやすい部分、ノーム・チョムスキーとダニエル・バレンボエムのところを読んでみました。それによってサイードの深遠な思想や音楽性を垣間見る思いがしました。

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彼はパレスチナ問題が持つ歴史的に複雑に絡み合う構造的な問題に対して発言していましたが、アメリカ人としてもパレスナ人としても本来的な理解が得られなかったようです。彼の亡命、政治、行動を基にした映画も幾つか創られました。ぜひ鑑てみたいです。                                               そして娘さんナジラ・サイードが作家活動家として課題を引きついでいることを知りました。

これからオリエントの歴史を少しずつ知ろうと思っております。

思い 31

年寄りになって自由な時間を持てるようになって自分の在り方が以前より観えて来ています。

実生活で得た知識や学んだ事柄の偏りが解って、うろたえております。それはある意味では荒い網で知識を掬い取って習得していたようなものだったなって感じです。

行動や性格もそうなのです。まあこの歳では振り返ってみても仕方ないかって思ったりして浅はかさを緩く許して楽ちんしながら学び直ししいています。

例えば高校数学を全く習熟していないので心の働きや生命に関係するサイバネティックスの考え方を解ろうとしても非常に浅くしか理解できないことなどです。こんなことで何事も中途半端、何事もアバウト、最近は気力も続かなくてボーッとしていたりしています。

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物忘れ、行動飛ばしの今年85歳のばーさんです。

思い 30

ソ連崩壊前後のエストニアを舞台にした物語『ラウリ・クースクを探して』(宮内悠介著 朝日新聞出版)を読んでみました。時代的にはラウリ誕生の1977年から46歳、現在までになっています。国境をまたいだ激動期に翻弄された若い世代の心情が伝わってきました。

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コンピューター歴史の一部分、そしてゲームソフトから発展した膨大なソフトの数々の実用化の様相など国際的な小説でした。年寄りでコンピューターの知識は全くといていいほどない私ですが、引き込まれてもしまいました。

東側の人々を日本人である著者が描き切っていて、広い見識に驚きました。直木賞にノミネートされたそうですね。

思い 29

いま、パンデミック現象やロシアによるウクライナ侵攻、そしてイスラエルで起こっている事柄からの影響を感じないではいられないです。私自身、世界史を学び直さなければと思ったり、いったい今の時点で何を思考能力として持てばよいのか迷っておりました。そして第二次世界大戦の勃発とその後を知りたいと思いました。

第二次世界大戦大戦がナチスソ連ポーランド侵攻によって始められましたが、今日のウクライナ侵攻を思われます。その時期のヨーロッパを知るのにアンジェイ・ワイダ監督の映画がぴったりだったようなのです。でも私は上映時期にはとても余裕のない生活で観ることが叶わなかったのです。

それで昨年出された『カテインの森のヤニナー独ソ戦の闇に消えた女性飛行士』(小林文乃著 河出書房新社)を読んでみました。

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これによって大戦中と東西に引き裂かれた大戦後のヨーロッパの様子が少し見えてきました。ヒトラースターリンによって犠牲になったユダヤ人とポーランド人の数を知り、ポーランド人の多さに驚いたのです。それで自分はポーランドが置かれている地理的条件、国柄を解っていなかったことにきづきました。ロシアつまり東側のありかたについても大戦後、どの程度の変化があったのか考えさせられました。

小林文乃氏の現地でのインタビューに続く解説は東側を知る日本人女性でなければ表せない部分もあって引き込まれました。自分はヨーロッパ大陸での戦火に塗れ、東西の思想に引き裂かれ圧迫されている国で生きなければならなかった人々、それにまだまだその渦中にある人々を思い知ることは難しいと思いました。ヨーロッパ大陸における入り込んだ民族感情を理解するのは日本人である自分には、果たせないことです。

この著作を読むことでロシアを見直すのに優しく道びいてもらった気がします。ヤニナのような女性が実在していたことを知り得たことも大きな学びでした。

思い 28

知り合いのご家族で発達に偏りがあり、悩み苦しんでいて、話しにこられるかたが何人かおられるのです。私自身も同じようにその渦中にあり、どうしようのなさの真っただ中です。知り合いの方も、私も、私の娘もみな少しずつ大切にしてるものが異なります。そして気づきに対する時間もまたさまざまで、条件も違っています。この生きにくさを語り合えるのを最近、再度ありがたいなって感じるのです。
すぐに糸口が見えなくとも、解決の見えない時間が少し楽になったり間が持てたりします。以前は解決策を見つけなければと焦ってしまいがちでした。しかし起こっている厳しい現実的で複雑な事柄に向き合ってみて、やっとこのような思いがやってきたのです。どうしようもなさをこえて優しさは生まれるんだなって感じです。
参考になりそうなので、『新版 ひきこもりのライフプラン -「親亡き後」をどうするか』(斎藤環畠中雅子著 岩波ブックレット No.1023)を読み終えたところです。

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ことに当事者にたいする「理解と対応」の部分は心すべき事柄であり、胸打つ内容でした。具体的に当事者とする会話のありか方が示されていて、私も気を付けて実行したいと思っております。どうしても上からの目線で、先読みの態度になってしまいがちです。

ライフプランの部分はそれぞれの立場で決定されるでしょうが、大まかな意味では安心感を貰えられるもので感心いたしました。制度などの学びによって腹をくくっていく方法が確かで安全なのですが、なかなかそこへ行きつくのが困難なことです。親のその都度の学びと相談に繋がるエネルギーを出すのがつらい・できない、手を出せない方もおられます。個々の思いがあります。
私たち家族もまとめ役であろう自分の時間が少なくなっているのに弱気です。

思い  27

以前にも増して会話のない毎日です。子供は週2回は来ております。ことに土曜の夜は私が食事をこしらえて読書の話や人間関係の話をするので、子どもは安心しているようなのですが、なんか物足りないのですね。贅沢かと思うのですが。

しかし歳行ってから新しい場所で交流する相手をつくる困難さをしみじみと感じています。仕事の対象ではなく自分を知ってくれている人が少ないということの収まりの悪さなのでしょう。これから先子供以外の方に身体介護を委ねる覚悟をどうつくれば良いものか考えさせられております。自分も扱い難い老人のようです。弱者であることケアを受ける立場を如何に自覚すればよいのか迷う毎日です。

児玉真美著『安楽死が合法の国で起こっておこっていること』(ちくま新書)を読んでみました。著者自身の体験から滲み出る想いに、また今日の医療の現場の仕組みの世界規模での変化等自分の思考を広げる読書となりました。著者の鋭く強いお人柄は想像を超えているような思いを致しました。

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自分の両親は検体を希望しそれを兄妹で実行したので、はやくから、尊厳死に興味をもち80才で公正証書を作りました。でもこの本をじっくり読んでみて複雑な気持ちにかられました。証書は果たして妥当であったかです。これほど複雑で奥深い問題を宗教感を少なくしか持たない自分に果たしてこのまま持ち堪えられるだろうか疑問も感じました。しかし決めたように、これで子供に委ねる道をとることにしましょう。

先週やっと前に図書館に予約して順番が回ってきた小説、トヴェ・ディトレウセン著『結婚/毒』コペンハーゲン三部作(訳枇谷玲子 みすず書房)を読んでみました。

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著者の経験のおおよそを題材とした、子ども時代、青春時代、四度の結婚、描かれていて圧巻でした。かなり以前より北欧の文化には興味があったのでこの437ページある本を2日間夢中になって読んでしまいました。女性が自分の感性を大事にして自己責任をもって生きることの困難さが感じられました。著者が労働者階級の中で育ち、庶民に親しみと共感を持たれて読み継がれていることが理解できました。第二次世界大戦前後のデンマークの様子、庶民の規範や生活のありさまなどが著されていて我が国と異なる点を思い知らされました。

時代も傾向性も異なる女性による2冊の著書に心動かされました。

思い 26

自分はサ高住に住んで4年目、今年は85才を迎えます

こんなに縛りがない施設は他にないようです。昼間はスタッフが常駐し、朝9時と午後3時に安否確認がありまりますがその時間帯でも外出していても差し支えありません。出入口はオートロックで受付もありますが記載して出入りは自由です。来客があってもこちらも記載して貰えば自由です。火気は厳禁ですがこれ以外はまあいってみればアパートに近い感じです。

サービスとしては予約制での食堂での食事、週2回の買い物、月一度のレクリエーションがあり介護保険による外部サービスも使えます。サービスを自分が選ぶわけですね。夕方6時に職員が退去するので、緊急時は非常用のペンダント使用です。

介護現場では職員の数は少なく10分刻みのようなサービスの感じで介護自動販売機のような印象を持つことがあります。

これらの事柄を理解していないと入居者がトラブルを起こします。また、時々禁煙できていない方もみうけられます。あと認知症になって動きが激しくなっても家族がグループホームなどへ何年も移さないでいたので周囲が困ったりしていましたね。自分は人間に興味を感じる方なので「みんな違ってみんないいは」好きなんですけど現実問題として実にこのところもやもやしました。

自分としてどのような立ち位置で感性を保つべきか、バランスをとっさの時もどう取るのかなって思っています。孤立を保って問題を避け外部での交流になってしまっています。